輸入ビジネスは、仕入れにかかるお金以外にも海外送料、代行手数料、関税、輸入消費税、通関手数料など輸入にかかる経費も含めて利益計算する必要があります。
その中でも、今回は意外と注意が必要な関税や輸入消費税について解説します。
【この記事を読むことで得られるメリット】
- 輸入ビジネスでかかる経費について理解できる
- 輸入にかかる費用を含めた利益計算ができるようになる
- 購入型クラファンでは正しい価格設定ができるようになる
関税の計算
関税とはなにか? と一言で表現すると、国内産業を守るために課された、輸入品に係る税金のことを言います。
関税は、歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、内国関税、国境関税というような変遷を経てきましたが、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されています。
※財務省:「我が国の関税制度の概要」
関税率については、商品の素材やカテゴリー、仕入れ先となる国によって違い、かなり細かく定められ、複雑です。
詳細はミプロやジェトロ、もしくは直接税関に問い合わせた方が早いです(税関公表の実行関税率表を見ると、いかに細かく分けられているかがわかります)。
しかし、関税の計算の仕組みや、目安については知っておいた方が良いので、以下に解説します。
小口輸入と個人輸入の違い
一般的な関税の計算式は、次のようになります。
小口輸入の関税 | (商品代金+保険料+送料)×関税率 |
個人輸入の関税 | 商品代金×関税率×0.6 |
※ただし、商品代金が10,000円以下の場合は原則として非課税
※「商品代金+保険料+送料」に当たる価格をCIF価格という
計算式を見てわかるとおり、個人輸入の関税は小口輸入の約6割の金額で済むのです。
小口輸入の場合は、商品代金だけでなく、保険料や送料も含めた額に関税率をかけなければいけません。
ただ、ここで気を付けたいのは小口輸入と個人輸入の違いです。
輸入ビジネスは、個人輸入と小口輸入どちらになるでしょうか?
個人輸入と小口輸入については、明確な線引きが曖昧な部分はあるものの、一般的には次のように定義されています。
小口輸入 | 個人使用ではなく、販売目的で輸入すること |
個人輸入 | 個人使用を目的として輸入すること |
個人で始める物販という意味で「個人輸入ビジネス」という呼称を使う人もいるので混同しやすいですが、輸入ビジネスは販売目的なので小口輸入です。
個人輸入と偽れば脱税行為になります(悪意がないミスでも過少申告と指摘されます)し、そもそも個人輸入で仕入れて第三者に販売すること自体が違法行為です。
もし、明らかに販売目的で輸入したのに、税関で個人輸入と判断された場合は、小口輸入である旨を伝えた方が無難です。
関税を安くするために、個人輸入で仕入れるようなことは絶対やめましょう。
なお、小口輸入と個人輸入では法律の規制にも違いがあります。
例えば食品衛生法であれば、小口輸入であれば「食品衛生法の手続き」が必要ですが、個人輸入では一定量まで手続きが免除されています。
薬機法対象の商品は、販売目的で輸入することが禁止なので、小口輸入では仕入れができません。
輸入ビジネスをする場合は、当然ながら小口輸入を前提として法律を守るようにしてください。
実効税率(総額20万円超の輸入の場合)
「商品代金+保険料+送料」が20万円を超えるような場合は、実効税率が適用されます。
先に書いたように、実効税率については、かなり細かく複雑に区分されており、自分で正確な税率を把握するのは難しいところがあります。
しかし、実効税率の大まかな目安については、税関のホームページに記載されているので、確認してみてください。
利益計算や価格設定を行う場合は、だいたいの目安がわかれば問題ありません。
税関のホームページをご覧になればわかるように、商品によって税率に差があるので注意してください。
以下、物販で比較的扱う商品で一例を示します。ファッション・衣類に関する商品は比較的税率が高いので要注意です。
【実効税率が高い商品】
毛皮のコート | 20% |
繊維製のコート、ジャケット、ズボン、スカート | 8.4~12.8% |
ネクタイ(織物) | 8.4~13.4% |
履物(甲が革製又は甲の一部に革を使用したもの) | 30%または4,300円/足のうちいずれか高い税率 |
寝具類(毛布、ベッドリネン、マットレス、布団) | 3.2~10.9% |
※2020年4月1日現在
【実効税率が無税の商品】
- 時計、腕時計
- パソコン
- デジカメ、ビデオカメラ
- 楽器類
- 玩具、人形
- 自動車、オートバイ
- モーターボート
- ヨット
- カヌー
- スキー用具
- ゴルフクラブ
- 家具類
※2020年4月1日現在
簡易税率(総額20万円以下の輸入の場合)
一方、総額20万円以下の少額輸入の場合は、簡易税率が適用されます(関税定率法第3条の3)。
少量仕入れをするような場合は、簡易税率が適用されることも考えられます。
なお、20万円以下でも上記の実効税率を選択することも可能なので、税率の低い方を選びましょう。
酒類
(1) ワイン (2) 焼酎等の蒸留酒 (3) 清酒、りんご酒 等 |
70円/ℓ
20円/ℓ 30円/ℓ |
トマトソース、氷菓、なめした毛皮(ドロップスキン)、毛皮製品等 | 20% |
コーヒー、茶(紅茶を除く)、なめした毛皮(ドロップスキンを除く)等 | 15% |
衣類及び衣類附属品(メリヤス編み又はクロセ編みのものを除く)等 | 10% |
プラスチック製品、ガラス製品、卑金属(銅、アルミニウム等)製品、家具等 | 3% |
ゴム、紙、陶磁製品、鉄鋼製品、すず製品 | 無税 |
その他のもの | 5% |
ただし以下の商品については、総額20万円以下の輸入の場合でも、簡易税率は適用されず実効税率が適用されます。
- 米などの穀物とその調製品
- ミルク、クリームなどとその調整品
- ハムや牛肉缶詰などの食肉調製品
- たばこ、精製塩
- 旅行用具、ハンドバッグなどの革製品
- ニット製衣類
- 履物
- 身辺用模造細貨類(卑金属製のものを除く)
輸入消費税の計算
通常、消費税というと納税義務者は消費税課税事業者に限られますが、輸入ビジネスでは、事業者ではなく、商品を仕入れる人に納税義務が発生します。これを輸入消費税と言います。
輸入消費税は、「商品代金+保険料+送料」(CIF価格)だけでなく、上記で計算して算出された関税額にもかかってきます。
単純にCIF価格に消費税率をかけるだけではないことに注意して利益計算をしてください。
【輸入消費税の計算式】
輸入消費税=(商品代金+保険料+送料+関税)×消費税率(10%)
※軽減税率適用の場合は8%
計算過程で端数処理が絡み、輸入消費税を消費税(7.8%)と地方消費税(2.2%)に分けて計算するので、厳密にはもう少し複雑な計算になりますが、イメージとしては上記の計算式でOKです。
関税、輸入消費税の計算例については、税関のホームページに記載されていますので、この通り計算してみてください。
なお、輸入消費税は、確定申告時ではなく、商品を仕入れたときに支払うので、確定申告時はすでに支払った分が還付されますので、忘れずに申告しましょう。
アンダーバリューによる脱税に注意
輸入ビジネスは小口輸入なのに、個人輸入と偽って関税額を安くするのは脱税なのは先にお伝えした通りですが、脱税でもう1つ気を付けたいのがアンダーバリューです。
アンダーバリューとは、インボイス(商品の明細書)を、実際の金額より安く記載して、関税や輸入消費税を安くする行為です。
言うまでもなく、明らかに脱税行為とみなされます。たまにインボイスの金額を安く記載しようかと提案されることもあるらしいですが、絶対にやめましょう。
悪意がある場合は、重加算税(35%~)が課されることになりますが、悪意がないミスでも過少申告加算税(10%~)や延滞税が発生します。
税務調査があれば簡単に発覚するので、インボイスには正確な金額を記載してもらうようにしましょう。
【まとめ】関税と輸入消費税に気を付けて利益計算しよう
以上、輸入ビジネスで商品仕入れの際にかかる関税と輸入消費税についてお伝えしました。
- 輸入ビジネスは小口輸入の関税の計算式で関税額を計算する
- 関税率は商品カテゴリーや仕入れる国によって細かく複雑に決められているが、目安はある
- 輸入消費税はCIF価格(商品代金+保険料+送料)だけでなく関税額にもかかる
- 誤って個人輸入で仕入れたり、インボイスの金額を安く記載したりすると過少申告となる。悪意があれば脱税
購入型クラファンの場合は、概算で良いので関税と輸入消費税を含んで利益予測をして、価格設定するようにしましょう。
成田式購入型クラファンにご興味のある方の無料相談は随時受け付けていますので、随時お問合せフォームより気軽にご連絡ください。