国内商品の物販に比べれば、輸入ビジネスでは食品関係を販売することはほとんどありませんが、食品衛生法の対象になるのは食品だけではありません。
そのため、輸入する商品によっては、食品衛生法に関する届出が必要な場合があります。
輸入規制をクリアしなければ販売できない商品は、多くの物販事業者が避けたがるところですが、食品衛生法は比較的クリアしやすい規制です。
そこで、今回は輸入ビジネスをやるなら知っておきたい食品衛生法関連商品の輸入手続きの手順を解説します。
【この記事を読むことで得られるメリット】
- 食品衛生法に関わる商品がわかる
- 食品衛生法に関する届出手続きの流れや方法がわかる
食器や容器、おもちゃも食品衛生法の対象
冒頭にもお伝えしたように、食品衛生法の対象となるのは食品や食品添加物だけではありません。
具体的には食器、容器包装、6歳児未満の乳幼児を対象としたおもちゃも食品衛生法の規制となり、具体的に以下の商品が規制対象となります。
つまり、原則として口に入れる可能性のある商品すべてが食品衛生法の対象になります。
飲食器 | カップ、皿、タンブラー、はし、スプーン、ナイフ、フォーク、ほ乳用具、ストロー |
割ぼう具
(調理用具) |
包丁、まな板、なべ、フライパン、ボウル、おたま |
食品に直接接触する機械、器具等 | コーヒーメーカー、ジューサー、ミキサー、スライサー、パスタマシン、タンク、ボトル、コンテナ、冷蔵庫、水筒、調味料入れ、食品トレー、かご |
口に接触するもの | おしゃぶり、歯がため、ふくれんぼ、シャボン玉の吹き出し具、口紅の形をしたおもちゃ、おもちゃの吹奏楽器類(ラッパ、笛、ハーモニカなど) |
アクセサリー玩具 | 指輪、ネックレス、ブローチ、ペンダントなど |
知育玩具 | 口に接触する可能性のあるもの全般(輪投げ、おもちゃの弓矢、水鉄砲、刀、手裏剣など) |
※ミプロ「食品用器具輸入の手引き」「おもちゃの輸入・販売手続き」を元に作成
ただし、食品衛生法は、口に入れるものが対象となるので、以下の口に入れることがない商品は規制対象外となります。
器具、容器包装 | 食器を収納するケース、食器棚、ナイフや包丁のさや |
乳幼児用おもちゃ | メリー、遊戯具、乳幼児が中に入るミニチュア家具、乳母車、口に触れない楽器(ピアノなど)、髪留め、ピンバッジ、文房具など |
観賞用 | アンティークのティーカップ |
※参考文献は上記同様
もし、食品衛生法に関わるかどうか判断に迷うようなことがあれば、最寄りの検疫所やミプロで確認してみてください。
その他、コンセントの付いた電気用品などはPSE(電気用品安全法)、レーザー光を放出する玩具などはPSC(消費生活用製品安全法)の対象にもなるので、併せて確認しておきましょう。
食品衛生法を突破する5STEP
※東京検疫所食品監視課ホームページより抜粋
以上のことを踏まえて、実際に食品衛生法を突破するまでの手順について詳しく解説します。
食品衛生法関連商品の手続きの流れについては上図の通りです。
これを踏まえて、食品衛生法の規制を受ける商品の輸入手続きの手順を示すと、大まかに以下の通りになります。
なお、手続きの手順は、品目登録制度利用するかどうかで変わってきます。
書類に原材料の記載を省略できる、電子輸入申請をすれば3回目以降は成績書の提出不要などメリットはありますが、次の理由で輸入ビジネスでは品目登録は不要でしょう。
- 登録承認まで1ヶ月かかる
- 法改正や商品の成分変更があった場合は、都度登録をやり直す必要がある
- 年間60,000件程度の食品衛生法関連の商品が輸入されるが、品目登録しているのはわずか約1,000件(約1.6%)
そのため、品目登録制度を利用しない方法で解説します。
【STEP1】最寄りの検疫所へ事前相談する
まずは、少しでも判断で迷う場合は、独断で手続きの要否を判断するのではなく、検疫所に相談するようにしましょう。
事前相談前の準備として、事前相談票や、商品写真の入ったカタログなどの必要書類を用意してFAXまたは郵送する必要があります(電子メール不可)。
⇒⇒【参考】東京検疫所の事前相談前の準備
輸入ビジネスで比較的よく関わる器具、容器包装類、乳幼児向けおもちゃの必要書類については、以下の通りです。
器具や容器包装 |
|
乳幼児向けおもちゃ |
|
※東京検疫所食品監視課ホームページより抜粋
ただ、書類を完璧に揃えないと事前相談できないというわけではなく、足りない書類や不備があれば教えてくれるので、できる範囲で揃えて郵送しましょう。
必要書類をFAXまたは郵送して1週間経っても連絡がなければ、問い合わせてください。
食品添加物などは必要検査などを細かく聞いておく必要はありますが、食器やおもちゃの場合は、事前相談してもそこまで大した情報は得られません。
ただ、日本食品分析センターで検査を依頼する際に、検疫所に事前相談するように言われるので、形式だけでも相談しておいてください。
【STEP2】⽇本⾷品分析センター(JFRL)へ検査依頼
次に、⽇本⾷品分析センター(JFRL)へ検査依頼します。
⇒⇒申込みはこちら
申込み前にJFRLへ必要情報を伝えれば検査費用や検査機関、必要書類などを教えてくれます。
食器や乳幼児用のおもちゃを例にすると、検査依頼に必要な書類は以下の3点です。
- 分析試験依頼書
- プロダクトシート
- インボイス
分析試験依頼書の様式や記入例については、JFRLのサイトをご覧ください。
⇒⇒分析試験依頼書
プロダクトシートは、フォーマットや記入例をJFRLからもらえるので、メーカーに記入してもらいましょう。
インボイスについては、次の点に注意して用意するようにしてください。
- JFRLの担当者に必要な検体数量を確認する
- メーカーから直接、⽇本⾷品分析センター指定の事務所に送ってもらう(輸入者側で商品サンプルを送るなど、輸入者の仲介行為は不可)
- 関税や消費税は、輸入者側に請求されるようにする
関税や消費税の請求に関しては、Fedex で個⼈アカウントを作り、メーカーにFedex で直送してもらうように依頼します。
その際に、作った個⼈アカウント番号を関税・消費税の請求者欄に記⼊してもらいます。
次のような英⽂をメールで送って、メーカーに伝えるようにしてください。
Please enter my Fedex account number “xxxx-xxxx-x(個人アカウント番号)”as a bill for duty and other taxes in Fedex Air Waybill.
That is because we will prevent duty and other taxes from being charged to theanalysis center.
その後メーカーの方で、対象商品のサンプルにプロダクトシートとインボイスを同梱してJFRLに直送してもらいます。
【STEP③】JFRLの検査後に試験成績証明書を送ってもらう
対象商品が⽇本⾷品分析センターに届くと、担当者から連絡がきて、追加の資料や他の検査が必要な場合になった場合は教えてくれます。
検査内容、費用、期間を確認して問題がなければ同意して、検査を開始してもらいます。検査内容にもよりますが、検査期間はだいたい10日ほどかかります。
検査後、試験成績証明書で報告してもらえますが、輸入する上での問題があれば、この時点でわかります。
【STEP④】最寄りの検疫所に必要書類を提出
JFRLの検査が終了して試験成績書を送付してもらえたら、以下の必要書類を揃えて最寄りの検疫所に提出します。
食品等輸入届出書 | ⇒様式や記入例はこちら | 必須 |
原材料、成分または製造工程等に関する説明書 | 食品等輸入届出書の元となる資料 | 必須 |
検査結果確認書 | ー | 東京・大阪は省略可 |
衛生証明書 | 家畜の伝染性疾病の病原体が伝染・拡散する恐れがある場合に提出(幼⾍・蜜蜂が混⼊している可能性があるもの等) | 必要に応じて |
試験成績書 | 日本食品分析センター(JFRL)より提出してもらう | 必要に応じて |
貨物が到着する7日前から提出が可能です。
書類不備があれば差し戻しされるので、原本を送る前に、FAXを送って書面担当者に確認してもらうとスムーズに手続きが進みます。
また、省庁間ネットワーク(通関業務の迅速・簡易化を目的とした制度)を利用すると、手続きが1~2日早くなります。
税関に連絡して担当者と連絡先を確認して、食品等輸入届出書の備考欄に以下のように記入しましょう。
省庁間ネットワーク希望
税関担当者:○○様
FAX:03-XXXX-XXXX
TEL:03-YYYY-YYYY
貨物番号:○○○○○
【STEP5】提出書類の審査をパスして輸入が完了する
提出書類を提出したら、あとは審査結果を待つだけです。
一般的には、⽇本⾷品分析センターで試験して問題がなかった商品は、だいたい審査をパスすると言われています。
審査をパスしたら、関税・消費税を支払って食品衛生法関連商品の輸入が完了します。
【まとめ】食品衛生法の輸入規制のクリアは難しくない
以上、輸入ビジネスをするなら知っておきたい食品衛生法関連商品の輸入手続きについて解説しました。
冒頭でもお伝えしたように、食品衛生法上の輸入手続きは、他の輸入規制(PSE、技適など)に比べるとクリアしやすいところがあります。
そのため、輸入規制商品を避けたがるライバルとの差別化という意味でも食品衛生法の規制対象商品を扱ってみるのもいいでしょう。
もし、食品衛生法関連の輸入手続きについて不明点があれば、詳細は最寄りの検疫所やミプロなどの機関に相談するようにしてください。
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