輸入ビジネスでは、関税や輸入消費税がかかる商品については正しく支払う必要があります。
故意に関税や輸入消費税を安く申告してしまえば、当然脱税行為となります。
また故意でなくても、申告ミスで過少申告していれば指摘を受けて過少申告加算税や延滞税を支払うことになるので注意しなければいけません。
そのため、輸入ビジネスを行ううえでは、自分が関税や消費税を正しく支払えているか把握し、申告ミスを防ぐ必要があります。
関税や消費税の支払いで、最も気を付けなければならないのが「アンダーバリュー」というものです。
今回の記事ではアンダーバリューについて詳しくお伝えし、意図しない過少申告を防ぐポイントをお伝えします。
【この記事を読むことで得られるメリット】
- アンダーバリューについて理解が深まる
- 関税や消費税の申告ミスを事前に防ぐことができる
- 申告ミスが発覚した場合の対応方法がわかる
- トラブルなく輸入ビジネスを行うことができる
アンダーバリューとは?
アンダーバリューとは、インボイス(請求書)を実際の金額より安く記載して、関税や消費税を安くする行為です。
関税や消費税は、「商品代金+保険料+送料」(CIF価格)に対して課税されるので、インボイスに表示する金額を安くすれば、関税や消費税が安くできてしまいます。
【参考】
- 小口輸入の場合の関税額=(商品代金+保険料+送料)×関税率
- 輸入消費税=(商品代金+保険料+送料+関税)×消費税率(10%)
例えば、輸入した商品が1個300ドルの商品を、税関では1個150ドルで仕入れたと嘘の申告をすれば、支払う関税や輸入消費税が半額になる計算です。
アンダーバリューは典型的な税金逃れの一種で、最悪関税法違反に問われることになります。(関税法第110条、111条)
また後述するように、悪意でなくてもアンダーバリューが発生する可能性があります。
悪意がないのにアンダーバリューが発生する主なケースと防止策
輸入している本人に悪意がないのにアンダーバリューが発生するケースとしては、主に次の3点があります。
もしかしたら、あなたの知らないうちにアンダーバリューが発生している可能性があります。
その場合でも国内では輸入した本人に責任が問われることになるので注意しなければなりません。
頻繁に発生することではありませんが、稀にインボイスを確認すると思った以上に関税・輸入消費税が安いことがあるので注意してください。
そこで、悪意がないのにアンダーバリューが発生する理由と防止策について詳しくお伝えします。
輸出する側が勝手にアンダーバリュー行為をするケース
悪意がないアンダーバリューで一番起こり得ることが、メーカーや代行業者が良かれと思い、インボイスに意図的に安い商品代金等を記入することです。
仮にメーカーなどから「インボイスでは商品代金を安く書いておきましょうか?」と言われれば、「No」と断れば大丈夫です。
しかし、メーカーや代行業者が良かれと思い、何も言わずに関税や輸入消費税を安くできるように虚偽のインボイスを作成する可能性があります。
もし、インボイスを確認するようなことをしていなければ、輸出する側の不正に気付くことができません。
そのため、商品を仕入れた場合は、インボイスや請求明細書、輸入許可通知書で商品代金(CIF価格)、数量、関税・消費税が正しいか確認する必要があります。
通常はこれらの書類が届くはずですが、もし届いてなければ、FedExやDHLなどの配送会社から必ずもらうようにしましょう。
特に輸入許可通知書は、輸入者に5年間の保管義務があります。
税務調査でも確認される場合があるので、必ずわかるように保管し、紛失した場合は再発行してもらうようにしてください。
サンプル品を輸入するケース
サンプル品と偽って無料か、もしくは著しく安い金額で申告して、別途正しい商品代金を支払うようなことをすれば、当然悪質なアンダーバリュー行為です。
ただ、購入型クラファンなどもそうですが、実際に輸入ビジネスではサンプル品を取り寄せることは多いです。
製品の品質を確認したり、商品の魅力を伝えたりするには、サンプル品の請求は欠かせないからです。
この場合、「嘘ではなく、本当にサンプルとしてもらっただけなので、インボイスの価格に含めなくて良い」と思うかもしれませんが、それは間違いです。
サンプル品の輸入は、場合によって関税の免除を受けることができますが(関税定率法第14条第6号)、条件があります。
詳しいことは、以下のジェトロのHPに掲載されています。
【ジェトロ】海外から見本を送ってもらう際の免税手続き
この条件に該当しなければ、例えサンプル品であっても、税関で申告する上では「商品が本来持っている価格」を申告しなければなりません。
そのため、インボイスでは、本来の商品代金や数量に加え、「No Commercial Value For Customs Clearance Purpose Only(通関用に本来の商品価格を提示するが、商業的な価値はない)」などと記載して、輸入時には関税の支払いが必要になります。
もし免税に該当するかどうか判断が難しければ、税関に確認すると良いでしょう。
前回取引の返金相当額を相殺して総額をインボイスに記載するケース
輸入ビジネスでは、稀に不良品が発生したり、型違いや全然違う商品が届いたりするケースがあります。
その場合、今回の取引価格は総額で10,000ドルになっても、前回取引の不良品の分を値引きしてもらって総額8000ドルにしてもらうようなことがあります。
このような取引自体は問題ないのですが、そのまま8000ドルで税関に申告することはできません。
この場合は理由を明記したうえで、8000ドル分の仕入れと、2000ドル分の無償提供分に分けて申告をする必要があります。
つまり、サンプル品と同様に、本来の商品代金と数量に加え、「No Commercial Value For Customs Clearance Purpose Only(通関用に本来の商品価格を提示するが、商業的な価値はない)」などと記載する必要があるのです。
そうしないと、商品単価を安く計算することになってしまい、アンダーバリューとみなされてしまいますので注意してください。
アンダーバリューはなぜ税関にばれるのか?
悪意の有無に関わらず、アンダーバリューは税関に見抜かれるものと思って間違いありません。
税関では、日本国内の輸出入品のすべてのデータが管理されています。
そのデータから明らかに逸脱していれば検知できる、ナックスと呼ばれるシステムがあるためです。
過去の膨大な商品データが蓄積されているので、同じ商品なのに明らかに商品単価の低いインボイスであればエラー検知できるのです(レンジアウトと言います)。
また、検知できるシステムに頼るだけでなく、税関職員も明らかに「商品単価が低い」と思えばチェックすることがあります。
このような理由で、アンダーバリューがあった場合は税関からチェックされ、基本的にばれるものと思って間違いありません。
関税、輸入消費税の納税額を間違った場合の対処法
先ほどお伝えしたように、アンダーバリューは悪意がなくても発生することがあります。
アンダーバリューなどで関税や輸入消費税の過少申告があった場合は、速やかに修正申告をするようにしましょう。
また、逆に納めた関税や輸入消費税が多い場合は、更正の請求を経て還付されます。
過少申告の場合
アンダーバリューなどによって過少申告が発覚した場合は、できるだけ早く修正申告を行うようにしましょう。
支払う税金は、増加税分に加えて過少申告加算税と延滞税になります。
過少申告加算税
過少申告加算税については税関の事後調査で指摘され、過少申告が発覚したような場合に加算されます。
しかし自分で気付いて、税関の調査通知を受ける前に自主的に修正申告すれば、過少申告加算税は課されません。
延滞税
延滞税の金額は、法定納期限(許可許可日)の翌日から修正申告する日まで、納める税金の額に対してかかります。
延滞税の税率は延滞期限の翌日から2ヶ月以内の場合は、「7.3%」もしくは「特例基準割合に1%を加えた割合」のどちらか低い方が適用されます(令和3年では2.5%)。
延滞から2ヶ月を過ぎると、年率「14.6%」か「特例基準割合に7.3%を加えた割合」のどちらか低い方が適用されます。
過大申告の場合
過少申告とは逆に過大申告となった場合は、更正の請求という手続きによって、税金の還付の請求が可能となります。
更正の請求ができる期間は、原則として輸入許可日から5年以内です。
【まとめ】悪意のないアンダーバリューに注意しよう
以上、アンダーバリューの概要と、 悪意のないアンダーバリューが発生する理由と防止策などについてお伝えしました。
故意にアンダーバリューを行うことは論外ですが、稀とはいえ悪意がなくてもアンダーバリューが発生することがあるので注意しましょう。
本記事で書いてあることを参考に、インボイスや明細書、インボイスや請求明細書、輸入許可通知書を確認するようにしてください。
なお、関税や輸入消費税については、以下の記事に詳しく書いています。
これは輸入ビジネス全般に言えることなので、海外メーカー品を仕入れてクラウドファンディングを通じて販売するときにも同様です。
購入型クラファンに興味のある方向けの無料相談は随時受け付けていますので、お問合せフォームより気軽にご連絡ください。